会社に経理を置かず、アウトソースする会社が増えてきています。
- 経理担当者を採用したいけど、なかなかいい人がいない
- 経理は会社の内部情報を見せるから、できるだけ信用できる人に任せたい
- 働き方改革で経理を効率化のために経理をアウトソースをしたいけど、業者をどうやって選べばいいのか分からない
この記事はこんな方々のために書きました。
と、いうのも経理代行会社選びで失敗してしまった、というお話をチラホラと耳にするからです。
せっかく経理を効率化しようと思ったのに、経理のアウトソース化に失敗して時間とお金だけが無駄に消えていくほどもったいないことはありません。
この記事では現役経理コンサルタントの私から見た経理代行について解説します。

経理代行とは
経理代行とはその名の通り自社の経理を代行してくれるサービスです。
バックオフィスの中でも経理は専門知識が必要な職種です。
最近では商業高校も定員割れをする学校が多く、簿記を勉強する人が少なく企業が求めるスペックの人材を採用することが難しい状態。
さらに日本の労働人口が減ることは目に見えていて、仕事を効率化して生産性をあげるという観点からもバックオフィス業務をアウトソースする企業が増えています。
世の中の流れ的にもこれからますます経理のアウトソース化は進んでいくでしょう。
ではそもそも経理代行とは何かを具体的に解説します。
経理のプロが経理業務を丸ごと請け負ってくれるサービス
自社の経理を経理代行会社のプロが対応してくれます。
経理スタッフが退職予定だけれど、スキルがある後任の経理担当者がなかなか採用できない・・・といった場合、経理代行なら経理のプロが対応してくれるので安心です。

経理代行と記帳代行は似て非なるサービス
経理代行と記帳代行はよく同じ意味で使われるのですが、似ているようで違うサービスです。
一言で表すと経理代行は丸ごと経理を代行、記帳代行は会計入力だけを代行するサービス。
経理代行の中に記帳代行が含まれているんです。
くわしくはこちら
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経理代行には派遣タイプと遠隔タイプがある
経理代行には2種類あり、会社に訪問して経理をしてくれる派遣タイプと遠隔で経理をしてくれる遠隔タイプがあります。
今の主流は遠隔タイプになりつつあり、派遣タイプは人材確保の面からもむずかしいため減少傾向にあります。
派遣タイプの経理代行が向いているのはこんな会社
- どうしても自社のインストール型システムを使わなければいけない
派遣タイプの経理代行について
- 費用面は会社に訪問する必要があるため、正社員を雇うよりも高い
- 訪問して経理をするため仕事が属人的になりやすい
- 経理代行会社側の人材リソースが足りず断られれてしまうことも
派遣タイプの経理代行先を探すなら、自社で正社員を雇うのとあまり変わりがないと言えます。
今の主流はこのタイプの経理代行
遠隔タイプの経理代行はが向いているのはこんな会社
- 経理をとことん効率化したい
- コストダウンをしたい
- 経理を丸投げするからとにかく何とかしてほしい
遠隔タイプの経理代行について
- 遠隔で作業をするために、経理周りの仕組みをクラウド化したり経理の業務整理が必要=経理の見える化につながる
- クラウド化など業務整理から請け負ってくれる会社が多い
- インストール型のシステムを使っていても上手く経理を回す方法を提案してくれる会社が多い
遠隔タイプの経理代行まとめはこちら
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経理代行の基本的なサービス内容
経理代行には基本的な経理業務がパッケージ化されています。
自社に必要なサービスをカスタマイズしてくれる経理代行会社もありますので、面談時に相談してみてください。
経理代行では税務申告書の作成などは税理士法により禁止されているため、経理代行会社では作成することができません。
税務に関わることは税理士、その他経理まわりのことは経理代行サービスにアウトソースが可能です。
ここからはほとんどの経理代行サービスに含まれている作業について一つずつ解説します。
請求書の作成
請求書の作成・発行を行ってくれます。
請求書の発送は遠隔の場合はシステム上から行うか、自社で印刷して請求書を封入・切手を貼って発送する業務が必要です。
売掛金の管理も行ってくれます。
各種支払い
支払いデータをインターネットバンキングに入力して、承認前までのデータを準備してくれます。
あとは最終決裁者が承認ボタンを押せば振込完了。
支払い一覧も作成をしてもらうと確認がしやすいでしょう。
買掛金の管理も行ってくれます。
会計入力
会計入力は経理の中でも基本の業務です。
会計データは最終的に会社の決算申告にも関わってくる重要な仕事。
しかし日々の業務に追われてしまい、会計入力が後回しになっている現場はよくあります。
経理代行に依頼すると領収書や請求書のデータを送るだけで入力を完了させてくれますよ。
給与計算
社員がいる場合は給与計算業務が発生します。
給与計算は経理の中でも絶対に間違いがあってはいけない業務。万が一間違いがあった場合は社員の会社に対する不信感につながってしまいます。
一方で社会保険料の改定・社員の扶養家族の情報・住民税の金額変更のタイミング・昇給などで個別に細やかな対応が必要なため、間違いが起こりやすい業務でもあります。
煩雑で細かい給与計算も経理代行のサービスに含まれていることが多く、プロが対応してくれるためミスが起こりづらくなると考えられます。
試算表作成
日々会計入力をしているため試算表がスピーディーに確認できます。
経理代行側でも最終チェックを行うため、翌月の何営業日までに確認したいかを初めに伝えておくといいでしょう。
経理代行を導入する5つのメリット
経理代行の最大のメリットは経営判断の早期化が期待できる点です。
プロの経理担当者が対応することにより正確な経理処理がスピーディーに行われるため実現することができます。
その他、コストや業務の見える化などにも経理アウトソーシングを使うメリットがあります。
それでは具体的にメリットを解説します。
コスト削減(採用コスト、教育コスト)につながる
正社員を1人採用すると、人件費・社会保険料の半分・ボーナスなどの人件費が発生します。
また、社員が退職する場合は新しい人材の採用コスト・引き継ぎ教育コストも必要。
経理を丸ごとアウトソースしてしまえば、経理にかかるこれらのコストはかかりません。
経理の属人化が防げる
経理が属人化のデメリットとして下記のような点があげられます。
- 経理業務が担当者しか分からない状態になる
- 突然の長期体調不良や退職の際に支払いが滞るなどの信用にかかわるミスが発生しやすい
- 試算表の作成が遅れ会社にとって致命的な状態になりやすい
- 不正・横領・ミスの隠蔽につながることも
経理代行を利用してアウトソースをすると、業務の見える化が進むためデメリットであげたようなことは起こりづらくなります。
アウトソース先がチームで経理を担当してくれるため業務の属人化に悩む必要はありません。
経理のプロが対応するため経理の精度が上がる
経理代行のサービス会社の多くは、会計事務所や税理士事務所がグループにある会社です。
そうではないサービス会社でも経理代行をするスタッフは簿記2級以上の保有者や経理実務経験が3年ほどあるようです。
社内で経理に詳しくない社員や経理未経験者を採用して経理の仕事をしてもらうよりも、スピーディーで正確な経理が可能。
その結果、信頼できる数字の試算表を早く確認することができます。
試算表作成のスピードが上がる
経理のプロが対応するため、仕訳の正確さとスピードアップが期待できます。
正確な試算表が早く確認できるということは、経営判断の早期化につながります。
経理担当者の急な退職で困ることがなくなる
自社でやっと経理を採用しても、すぐに退職してしまい経理が定着しない・・・なんてことはありませんか?
派遣を雇おうにも期間やスキルが合わずになかなか経理が安定しないという声はよく聞きます。
経理代行ではチームを組んで作業をしている会社が多いため経理が安定します。
また、経理を新たに採用する必要がなくなるため前任者からの引き継ぎコスト、求人広告にかかっていた費用、採用した後にかかる教育コストなども考える必要がなくなります。
経理代行を導入する3つのデメリット
自社のインストール型のソフトをどうしても使わないといけない、など会社固有の業務やシステムやルールがある場合はデメリットの方が大きくなるかもしれません。
自社でしか使われないシステムを使っている場合でそれを変更することもできない場合は、経理代行会社に依頼するとオプション料金がかかるでしょう。自社にノウハウがたまらない上にオプションで経理代行費用が高くついてしまうと、何のために経理代行を導入したのか分からなくなってしまいます。
ここからは経理代行を導入した時に発生するデメリットを解説します。
自社に経理のノウハウがたまらない
自社のことは自社で全て把握しておきたい、と言う場合には経理代行は向いてないでしょう。
経理をアウトソースしてしまうため、経理を効率化するノウハウや日々の業務の知識などは社内に蓄積されません。
経理代行サービスの契約を解除する時に、経理プロセスや一定の引き継ぎは行ってもらえますが、やはり社員の教育は必要になります。
経理代行導入時に負荷がかかる
経理をどの程度効率化して経理代行を導入するのかにもよりますが、導入時には多かれ少なかれ現場に負荷がかかります。
この導入さえ乗り越えれば見える化された効率のいい経理プロセスになるのですが、
そもそも経理のリソースが足りなくて経理代行を検討している場合はこの導入負荷に耐えられないかもしれません。
場合によっては派遣や社員よりコストが高くなることも
自社で独自の経理業務がある場合、経理代行の基本サービスに加えてオプションで依頼する必要があります。
自社の経理プロセスに合うようにオプションを増やしていくと、派遣や正社員よりを雇うよりも費用がかかることも。
一方で派遣や正社員を雇っても採用コストや教育コストがかかります。
また、必要なスキルを持った人材が採用できるとも限りません。
そう考えるとトータルで考えた時に経理代行の方がお得だとも考えられます。
失敗しない経理代行会社の選び方のポイント6つ
残念ながらはずれの経理代行会社も存在します。
経理代行のコストや新システムの他に、契約する前には細かい対応を見て経理代行会社を見極めておかないと経理アウトソースが失敗に終わることも。
経理代行には下記のようなことを期待しませんか?
- 最低限のコミュニケーションで正確な処理をしてくれる
- 経理業務に対する豊富な知識
- 経理の効率化を手際よく進めてくれる
- 自社のリソースは最低限で経理アウトソースを導入してくれる
経験豊富で細やかなところまで気がつく経理代行会社であれば、このようなことは当然のように対応してくれます。
一方でそうでないところは時間ばかり取られて一向に経理アウトソースが進まない・・・ということになりかねません。
経理代行会社選びで失敗しないために確認していただきたいポイントを解説します。
経理代行会社の社内体制を確認する
どのような体制で経理代行を受けているのか質問してみましょう。
いい経理代行ではこのようなところが多いです。
- チーム制(リモートワーカー含むが機密保持契約をもちろん結んでいる)
- 社内・グループ会社に会計士や税理士がいる、または契約している会計士・税理士がいる
また、普段は9:00〜17:00の対応でも、イレギュラー発生時に対応が可能なのか確認が必要です。
突然明日までに振り込まないといけないものが発生したり、必要な書類が出てきたりするもの。
細やかな対応をしてくれる先は、安心して経理代行を任せられるでしょう。
具体的な問題に対して解決策を提案してくれる
経理代行先の実力を見極めるために、具体的に今悩んでいることを相談してみてください。
よく分かっていないような回答が返ってきた場合、その経理代行会社の実力を疑ったほうがいいでしょう。
経理代行の営業の場にはその会社で経験と知識が豊富な人がやってくることが多いもの。
いわばその会社の顔のような人です。
その人の知識が乏しかったり頼りないということは、経理代行で実際に作業を行う人の実力も疑わしくなります。
信頼できる経理代行会社は具体的に解決方法を提示してくれたり、本当にわからない場合はあいまいな回答はせず面談後に調べてすぐに回答をしてくれ誠意を見せてくれるでしょう。
自社と経理代行のテンポが合うか
連絡をした際、
- 電話やメールを使うのか、チャットツールを使うのか
- 質問に対してどれくらいの時間で返信がくるのか
- チャットで何か発言した際にレスポンスがあるのかないのか
こういった細かいコミュニケーションが合う会社とは、仕事もストレスなく進むでしょう。

成果物とゴールを初めに明確にしてくれる
経理代行は形のないサービスです。
「どういう状態になった時に経理をアウトソースしたことが成功だったと言えるのか」事前にゴールを設定しておく必要があります。
成功というゴールに向かうために経理プロセスの設計書やマニュアルが必要になることも。
そういった成果物を共有してくれ、確認しながらゴールに向かって進めてくれるかどうかもチェックしてくださいね。
経理効率化のためのツールを提案してくれる
最近の経理はクラウドツールが進化し、ツールを上手に活用すれば経理の単純作業を効率化できるようになっています。
新しいツールを導入して経理プロセスの効率化を提案してくれるかどうかもチェックポイントのひとつです。
反対に「御社の経理プロセスをそのまま引き継ぎます!」といった経理代行先は、あまり経理業務に対する知識がないと思われます。
なぜなら経理プロセスを変更するということは経理業務に詳しくないとできないことだから。
経理知識に自信がないと新しいツールの提案もできません。
クラウドツールを提案してくる経理代行会社がほとんどだと思いますが、提案されなかった場合は要注意です。
実務についてデモをしてくれる
新しいツールを導入する場合や経理プロセスを再構築する場合、実務について丁寧にデモをしてくれるかもチェックしてください。
経理は丸ごとアウトソースするので作業を覚える必要はありませんが、どういう仕組みで自社の経理が行われているのかを把握しておきましょう。
特に新しいツールを導入する場合はそのツールを使うとどういうところが便利になってどういう使い方ができるのか。
こういった細かい点をデモンストレーションしてくれる経理代行先だと安心です。
まとめ
経理やバックオフィスを効率化してコア業務に集中しよう、という流れはもう避けては通れません。
多くの企業では経理をアウトソースし始めています。

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